グラビティターン

投稿者: | 2019年12月24日

ロケットはほぼ真上に打ち上げられることが多いが、これは最初だけで、地球を周回する軌道に乗った時には水平に飛行している。これは空気抵抗の大きい大気圏を最短で通過するための工夫である。

まず、ロケットが発射後、大気圏を抜けるまでの飛び方を説明する。ロケットは想像以上に華奢な構造物であり、飛行中に風圧で折れないように気を付けて飛ぶ必要がある。ロケットのような細長い棒が斜めから強い風を受けると、曲げる力が働いて先端から折れてしまう。そうならないように、ロケットの先端から真っすぐ風を受け流せるように飛行する。大気に対する相対速度と同じ方向にロケットの軸を向けて飛行することが望ましい。この飛行方式を「グラビティターン」という。このように飛行すると、重力(グラビティ)の影響で、放物線のように飛行経路が勝手に徐々に下方へ曲がっていくため、この名前がついている。

簡単に言うと、尾翼の付いた観測ロケットやモデルロケットは、常にグラビティターンで飛行する。これは、尾翼の風見安定により、ロケットの機軸方向が自動的に風上に向くためである。姿勢制御系を備えたロケットの場合は、尾翼安定の場合と同じように姿勢を制御すること、これがグラビティターンである。

因みに、ロケットが大気中を超音速で飛行する際の風圧(動圧)は1気圧前後の大きさになる。1気圧なんて、地上で普段から感じているから大したことないと思われるかもしれないが、全方向から受ける静水圧の1気圧と、一方向から受ける動圧の1気圧では全く別物である。例えば、台風で風速40m/sの暴風を正面から受けた時に感じる風圧は、100分の1気圧に過ぎない。地上で1気圧の風圧を受けるために必要な風速は、ほぼ音速である。ロケットは地上よりも大気密度の低い高度を飛行するが、マッハ4とかで飛行するため、1気圧くらいの風圧になる。

大気圏を通過すると動圧は下がり、構造上の迎角制約は無くなるので、その後はひたすら水平方向に加速していく。