飛行機はなぜ浮くのか ~揚力の原理~

投稿者: | 2020年1月28日

この古典的なテーマは語りつくされているが、あえて考察してみる。

ヘリコプターからの類推

翼が固定されている飛行機がなぜ浮くのか不思議に思う人は多いが、翼が回転しているヘリコプターはなぜ浮くかと聞かれると、意外と納得できるという人は多いのではないだろうか。

回転翼は上から下向きの強い風を起こすため、その反動で浮く力が発生する、というのは、竹とんぼや扇風機などの馴染み深い例もあって、直感的に理解しやすい。

実は、飛行機もこれと同じ原理で浮いている。下の図のように、直径100mもある大きなヘリコプターが浮上しているとする。その回転翼の先端部分5mを切り取って考えてみると、翼幅5mの固定翼飛行機が直径100mの旋回飛行をしているとみることが出来る。

Similarity in an air-plane and a helicoptor
ヘリコプターの回転翼の先端は飛行機と同じ

そう、飛行機の翼も、ヘリコプターの回転翼と同じように、上から下へ風を吹き付けることによって揚力を得ているのである。ただし、ヘリコプターの先端と同じくらい速く移動し続けなければ落ちてしまう。逆に言えば、ヘリコプターは、速く飛ぶ代わりに、翼を速く回転させることで、本体は静止しながら浮くことが出来る。

ベルヌーイの式から

次に、もう少し理論的な考察を進める。これは、ある時に揚力について講義をした際に用いた説明法である。

まず、ベルヌーイの定理を私の言葉で表現すると、

流れる速度が減少(増加)している場所では、圧力が増加(減少)している。

私も初めは理解できなかったが、この速度変化と圧力変化に優劣や順序はなく、同時に起こるということを理解したときに、腑に落ちた。ニュートンの第二法則で、力と加速度がどちらが先でもなく同時に生じること、オームの法則で電流と電圧に順序が無いのと同じことである。

流れ方向と流速変化(圧力変化)方向が平行な場合

ベルヌーイの定理を図示すると上のようになる。青い矢印は流速を表しており、中央部の狭くなっている領域では流れが速い。上の曲線は流路の壁であると同時に、圧力の高さも意味しており、中央部だけ圧力が下がっている。

この曲線の上に球を置いて転がすと、中央の窪地に向かって加速し、中央部で速度が最大となった後、減速していくだろう。ちょうど流速の変化と同じ挙動を示すのは偶然ではない。

左から中央部に向かって流れが加速している課程を見てみよう。圧力が徐々に減少している場所では、球が勾配に沿って加速されていく。圧力勾配と速度変化が表裏一体に生じるというベルヌーイの定理とは、このようなものである。

流れと速度変化が垂直な場合

上記は、流れ方向と流速変化(圧力変化)方向が平行な場合だった。流れの速度がそれ自身と直交する方向に速度変化が与えられた場合、流速は変わらず、速度の向きが変わる。そして、ベルヌーイの定理から、速度変化と同じく流れに直交する方向に圧力勾配が生じる。

流れ方向と流速変化(圧力変化)方向が垂直な場合

上図のように、流れ方向を下向きに変えるように曲がった壁があり、その間を流れる場合、青い矢印で示される下向きの速度変化に付随する形で、上部から下部に向かって圧力減少が生じる。

これと同じものを上下に並べると、壁を飛行機の翼と見たときに、翼の下面が高圧に、上面が低圧になる。この圧力差によって揚力が発生する。このように、ベルヌーイの定理だけから揚力の発生原理を説明することが出来る。