長征5号Bの1段落下問題

投稿者: | 2021年5月22日

この問題については、既に指摘した記事で書き尽くしている。この記事のアクセス数が、最初に報道された5月5日から急増した。しかし、実際に落下してから3日もすると元に戻った。社会の関心の移り変わりの速さを実感する。既に忘れている人も多いだろう。それが中国の狙いである。多分大丈夫だからやってみる→偶然事故が起きなかった数例をもって安全の証明とする、という考え方は、人命の安全に係ることに関しては許されるべきではない。人命の安全に係らないことであれば、ちょうど良い危機管理レベルかもしれず、それが中国の火星ローバー着陸成功や、SpaceXのStarshipなどの目覚ましい開発スピードに繋がっているが。

JAXAは正式に抗議すべき

今回、運よく海に安全に落下したため、間違いなく次回も何の対策もせずに長征5号Bは発射されるだろう。世論として醸成するためには繰り返し発信が必要である。公道を逆走するようなこの行為に対して、JAXAはNASAのように抗議すべきである。NASAにしても長官がコメントした程度では弱い。せめて文書をWebに掲載する形で正式に抗議し続けるべきである。私には、これについて記事を書き続けることしかできないが。

中国に落下する可能性も高かった

ただ実際には、抗議だけでは恐らく行動を変えることは出来ないだろう。実際に事故が何度も起こるまでは。軌道傾斜角と等しい緯度より低緯度側であれば原理的にどこに落ちてくるか予測できない。例えていうなら、川で遊ぶ水切りで、何回目のバウンドで水没するか予測するようなものである。自国領土に落下する確率は領土の面積に比例し、数字で見れば高くないため、各国ともそのようなリスクに対してコストのかかる対応策は取れない。中国より低緯度側で領土の大きい国はアメリカと中国とオーストラリアなので、実は中国も高いリスクを抱えていた。そこは自業自得とも言えるが、もともと中国の国土にはロケットを平気で落としてきているので今更問題気にしていないのだろう。